渋谷区某所 とあるファストフード店。 「なんで渋谷なんだよ」 「俺が落ち着くから」 傍から見たら中学生の初々しいカップルに見えるかも知れない。 たとえ男のほうが椅子に浅く腰掛けだらしなく背もたれに体を預けて眠そうな顔をしていようと。 たとえ女のほうが相手のトレーに乗っているポテトを無断で横取りしていようと。 共通点といえば同じ学校の制服を着ていることぐらいで、会話がすべて英語で行われていれば周りの人は聞き耳を立てるようなこともない。 日本人にしては少し濃い顔立ち。 身長も同じくらいか、男のほうが少し高いぐらい。 二人は、血の繋がった双子の兄妹だった。 「サンディ、日本にいるならこっちくればいいのに。じーさんもばーさんもお前の顔見たがってるよ?」 「ママがダメって。アルと会うのは仕方ないけど、代々木のお家に近寄ったらアメリカ連れ帰るって言われちゃった。パパとも会っちゃダメって」 「相変わらずだね、母さんも」 「いいの。アルと会えただけでも嬉しい。一緒の学校通えるんだもん、ちょっとぐらい我慢するわ」 「…サンディいつからそんなに女っぽい話し方するようになったの?オレと二人の時ぐらい素でいいと思うよ」 「んーもう。アルってばなんでもお見通しなのね。でも敬語も覚えなきゃいけないしせめてちょっとでも女の子らしい振る舞いっていうのかしら。覚えようとおもってね!日本じゃヤマトナデシコってのがウケるんでしょ?」 「そういうの、猫かぶるって言うらしいよ。精々バレないように頑張ってね」 「碧、難しいことわかんなーい」 「そういうとこ母さんにそっくりだ」 「ヤメロ。マジで。次言ったらブッコロス」 「なんか安心した。会えなかった二年間におかしな事でもあったんじゃないかと思ったよ」 「……ちぇ。相変わらずなのはアルだって一緒じゃねーか。なんでもお見通しみたいな顔しやがって」 「サンディのことならなんでも分かるよ。お前だってそうだろ?」 「そりゃな。伊達に双子で生まれてきたわけじゃねーよ」 店を出て駅に向かう。 飛鳥の住処は徒歩圏内だが、碧のアパートは学校の近くだ。 「また明日ね、サンディ」 「こっちまでくるとバーさんに会いたくなるからよ、次からは吉祥寺でメシ食おうぜ」 「この辺なら偶然父さんにも会えるかもしれないけどね」 言葉の端に、だからたまにはこっちに来いと滲ませて。 アメリカにいた頃の癖で、強くハグして頬にキスを送る。 手を振って井の頭線のホームに吸い込まれていった碧を見送って、ふと感じる視線に首をかしげる。しばし考え、あぁ、日本じゃこんなことしないのかと思い当たって気恥ずかしくなり、早足で駅を出た。 PR カレンダー
つぶやいたー。
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d01332:蘇方飛鳥とd01638:常磐碧とその背後。 ゲーム関係者は大歓迎 ソレ以外はスルー推奨です。 最新コメント
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